“壺おじ”の新作『Baby Steps』、ついに登場! 歩くだけで激ムズ!?奇妙な山登りアドベンチャー

2025/10/02

2025年9月24日、ついにリリースされたBennett Foddy氏の新作『Baby Steps』。
“壺おじ”でおなじみ『Getting Over It』の開発者が放つ今作は、一見するとまたもや「イラつくゲーム」かと思いきや……?

実際にプレイしてみると、そこには理不尽と納得が同居する、不思議に中毒性のある体験が待っていた。


■ 一歩がこんなに難しいとは思わなかった

主人公ネイトは、典型的な“実家ニート”。ある日突然、謎の山岳地帯に転送され、ろくに歩けもしない身体で山を登る羽目に。

操作はというと、左足はL2、右足はR2で持ち上げ、前に傾けて着地して……の繰り返し。つまり、「歩く」ことがゲームのすべて。

「はいはい、変な操作でイライラするやつね」と思った人、少し待ってほしい。たしかに最初は足を出すだけで転びまくるけど、コツを掴むと、本当に“歩ける”ようになる。歩くという行為にここまで没入したのは初めてだ。


■ “死にゲー”ではなく、“耐えゲー”

『Getting Over It』のように、一度のミスで全てを失うタイプのゲーム……ではない。

確かに何分もかけて登った斜面から転落したり、川に落ちて入口近くまで流されたりと“エグい”仕掛けはある。でも、完全なリセットはない。少しずつ進めば、確実に前には進める。

チャプター構成+チェックポイントありの設計は、間違いなく初心者にも優しい。ゲームに挫折しにくい絶妙なバランスがある。


■ 「不自由な主人公」であることのゲーム的必然性

ネイトは走らない、ジャンプしない、転んでも手をつかない。とにかく無力

でもそのぶん、プレイヤーの観察眼と操作精度にすべてが委ねられる。だからこそ、
「この足場、本当に行けるのか?」
「重心をここで止めれば、いけるかも」
といった地道な判断と試行錯誤が活きてくる

身体能力でゴリ押しできないぶん、ルート発見の達成感が異常にデカい


■ オープンで柔軟なフィールド設計

ステージは線形ではなく、ループやショートカットが張り巡らされた半オープンな構造

「こっちの坂がダメならあっちを試す」「どうせ落ちるなら逆方向から登ってみよう」
と、無駄に見える試行錯誤が無駄にならない作り。

実は“正解ルート”という概念自体がかなり緩く、プレイヤーの工夫次第でいくらでも道が拓ける。これは“探索アクションゲーム”としてかなり面白い要素だ。


■ 脱力系ストーリーと、やけにクセになるサウンド

ストーリーは基本的にゆるくて笑える。
「いやそこは受け取れよ!」とツッコミたくなる会話劇が続くけど、最後には妙に沁みるいい話に着地するのがニクい。

環境音や効果音は、どこかシュールで妙に耳に残る。
動物の鳴き声、環境音、ネイトの情けない叫び声……すべてが**“ヘンだけどクセになる”演出**に一役買っている。


■ 難易度とユルさの絶妙なバランス──Foddy作品の新たな傑作

『QWOP』の煩雑さ、『Getting Over It』の苛烈さ。どちらもBennett Foddy氏の代名詞だったが、
『Baby Steps』はそのどちらとも違う。

理不尽さを抑えつつ、でも一筋縄ではいかない。
攻略の喜びと、バカらしさと、ちょっとした哲学が共存している。

個人的には、Foddy作品の中で**もっとも“人に勧めやすく、もっともクセになる一作”**だった。


■ 総評:歩く。それだけなのに、面白い。

「バカバカしい」「もどかしい」「めんどくさい」。
だけど、もう一歩、もう一歩と進んでしまう中毒性がある。

“Baby Steps”というタイトルはネイトの動きを指しているだけでなく、
プレイヤー自身の試行錯誤の進み方にも重なる。

一歩ずつ進める人なら、必ずこの山を越えられる。
そして、山を越えた先には“何か”が待っている。

それが何なのかは、あなたの目で確かめてほしい。

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