「.hack(ドットハック)」というゲームを、あなたは覚えていますか?
先日続編である『.hack//G.U.』のコラムを公開しましたが、無印版である『.hack//感染拡大 Vol.1』は2002年6月20日、PlayStation 2向けに発売されました。
実はこのタイトル、「オフラインでオンラインゲームの世界を体験できる」という、架空のオンラインゲーム“The World”を舞台にした異色のRPG。
当時としてはとても新鮮なコンセプトが話題になった作品なんです。
架空のオンラインゲーム「The World」で始まる物語
本作の主人公は、友人に誘われて人気オンラインゲーム“The World”を始めることになった少年・カイト。
ところがプレイ中、友人が突然意識を失ってしまい、現実世界に戻らないままに…。プレイヤーはカイトとして“The World”を探索し、友人の謎を追いかけることになります。
ここで注目なのは、プレイヤー=現実世界の主人公=ゲーム内のカイトという、三重構造にも近いストーリーテリング。まさに「オフラインオンラインRPG」というべき、ユニークな体験を提供してくれました。
時代を先取りしていた『.hack』
『.hack//感染拡大』が発売された2002年といえば、MMORPGがようやく一般に広がりはじめたころ。
『ファイナルファンタジーXI』などのオンラインRPGが登場しはじめたとはいえ、まだまだ高速回線や月額課金が当たり前ではない時代でした。
そんな中で、「ネットワークにつながずにオンラインゲームの世界を遊べる」という触れ込みは、ゲーム少年・少女たちにとってまさに夢のような話。
オフラインRPGなのに、リアルなオンライン体験ができるというギャップが、多くのユーザーの心を掴んだのです。
キャラの魅力を支えたのは、貞本義行のデザインセンス
『.hack』シリーズのキャラクターデザインを担当したのは、貞本義行さん。
彼は『エヴァンゲリオン』や『時をかける少女』、『サマーウォーズ』などでも知られる人気アニメーター・イラストレーターで、当時すでにその名を知られた存在でした。
カイトやブラックローズといったキャラクターたちは、どこか現実味を持ちつつも“ゲームのアバターらしさ”も併せ持つデザイン。
この絶妙なバランス感覚が、『.hack』の不思議な世界観を成立させる大きな要素だったのです。
ゲームだけじゃない!クロスメディア展開も『.hack』の魅力
『.hack』シリーズのもう一つの大きな特徴が、アニメや小説、マンガといった多方面へのクロスメディア展開。
たとえば、ゲームの発売に先駆けて放送されたアニメ『.hack//SIGN』では、ゲーム本編とは異なる視点から“The World”の謎に迫る物語が描かれました。
さらに、ゲームにはアニメ『.hack//Liminality』のDVDが同梱されており、ゲーム内の出来事と現実世界の出来事が同時並行で進行する構成に。「物語の断片をいろんな媒体から拾い集めていく」体験は、まさに“ゲーム×アニメ×小説”の醍醐味でした。
リマスター版『.hack//G.U. Last Recode』もおすすめ!
「いまからプレイするにはちょっと古すぎるかも…」という方には、リマスター版『.hack//G.U. Last Recode』がおすすめです。
PS4、Nintendo Switch、PCでプレイ可能なこの作品は、シリーズ第2作『.hack//G.U.』三部作+追加エピソードを収録した豪華パック。より洗練された“The World”を舞台に、主人公ハセヲの成長と絆の物語が描かれます。
『.hack』の歴史をまるごと知りたいなら、この1冊!

2022年には、シリーズ20周年を記念した書籍『.hack//20th Anniversary Book』も発売。
ゲーム、アニメ、マンガなど全35作品以上にわたる『.hack』の世界を一気に振り返れる超豪華本です。
設定資料やインタビュー、オリジナルマンガまで収録されており、ファンならずとも手元に置いておきたくなる一冊!
最後に:20年たった今こそ、.hackの革新性を再評価したい
『.hack//感染拡大 Vol.1』は、“ゲームとリアルの境界線”を問いかける革新的な作品でした。
その物語性と構造、メディアを横断する演出の数々は、今なお多くのファンの記憶に刻まれています。
仮想空間、アバター、クロスメディア……今では当たり前になった要素を、2002年という早すぎる時代にすでに形にしていた『.hack//感染拡大 Vol.1』。
“オフラインでオンラインを体験する”という先進的コンセプト、
そして物語の奥行きと多層構造――
『.hack』はまさに、“ひとつの時代を作ったRPG”だったのです。
もしまだ『.hack』の世界に触れたことがないなら、ぜひ一度、“The World”にログインしてみてください。