ゲームの進化は目覚ましく、グラフィックも操作性も年々進歩しています。それでも私たちは、ふとした瞬間に「昔のゲームがやりたい」と思うことがあります。最近発表された研究は、そんな私たちの“ノスタルジックな衝動”に、しっかりとした根拠があることを示しています。
「10歳の頃に流行していたゲーム機」が、再び選ばれる
オックスフォード大学のNick Ballou博士らが行った研究によると、人は「10歳前後に夢中になったゲーム機」に、再び手を伸ばす傾向があるとのこと。
この研究は、Nintendo Switch Onlineで提供されているレトロゲーム(ファミコン、スーファミ、NINTENDO 64、ゲームボーイなど)のプレイデータをもとに行われ、18歳〜79歳の1,607人のプレイ傾向が分析されました。
結果として、約40%の参加者がレトロゲームを少なくとも一度はプレイし、しかも最も多くプレイされたのは、自身が10歳前後に親しんだハードだったのです。
この傾向は、心理学における「レミニセンス・バンプ(Reminiscence bump)」という現象とも関連があるといわれています。これは、人が10代〜30代前半の記憶を鮮明に覚えている傾向のことで、ゲームのような感情に深く関わる体験は特に記憶に残りやすいのだとか。
「歴史的ノスタルジア」も人気を後押し
一方で、自分が生まれる前にすでに生産終了していたゲーム機を楽しむ人も少なくありません。
プレイデータのうち約29%は、そうした“世代外”のレトロゲームによるものでした。
これは、直接の思い出はなくとも、歴史的・文化的価値や興味によって惹かれる「歴史的ノスタルジア」が作用している可能性があります。
40代に人気、NINTENDO 64とスーファミが強い
年齢別のデータを見ると、レトロゲームのプレイ率は年齢とともに上昇し、特に40代前後でピークを迎えています。
人気のハードはNINTENDO 64(プレイ時間の約32.7%)とスーパーファミコン(約27%)。どちらも90年代に絶大な人気を誇った機種で、該当世代にとっての“原点”ともいえる存在でしょう。
携帯機は、今でも「携帯」で遊ばれる
興味深いのは、Nintendo Switchでのプレイスタイルにも傾向が見られた点です。
ゲームボーイやゲームボーイアドバンスといった携帯機向けタイトルは、69%が携帯モードでプレイされていたのに対し、据え置き型のタイトルは57%にとどまりました。
これは、当時のプレイ環境を再現したいという心理が働いているからではないかと研究者は指摘しています。
ノスタルジー=幸せ? 幸福度との関係は…
なお、この研究では「レトロゲームのプレイ頻度と幸福感とのあいだに明確な相関関係は見られなかった」とも報告されています。
しかし、これはあくまで“長期的・平均的な”データであり、たとえば「懐かしいゲームをプレイした直後の気分がどう変化するか」といった、より細かい感情の動きについては、今後の研究課題とされています。
これからの“レトロ”は、ゲームキューブ世代?
こうしたノスタルジアをめぐる動きは、今後さらに広がるかもしれません。
「Nintendo Classics」では、Nintendo Switch 2に向けたゲームキューブタイトルの配信も予定されています。すでに『カービィのエアライド』の新作発表もあり、当時10歳前後だった世代にとっては嬉しいニュースです。
またPlayStation Plusのクラシックスカタログでは、初代『アーマード・コア』や『BIOHAZARD Director’s Cut』といった、90年代の名作が続々と追加されており、任天堂に限らず“レトロ熱”は広がりを見せています。
思い出のゲームが、再び心を動かすとき
最新ゲームが次々に登場する現代においても、私たちの心を最も動かすのは、「当時の自分」を思い出させてくれるような体験かもしれません。
10歳の頃に夢中で遊んでいたゲームを、今の自分が再び手に取る――そんなひとときに、言葉では言い表せない価値があるのだと思います。